人が守り受け継いだ自然と文化 ~ 逆境をチャンスに変えるためのカナダ派遣 ~

目次

まとめ

​​富士スカウト章を取得した者の中で、自身が立ち上げた社会的テーマの探究を応援する「スカウト特別海外派遣」プロジェクト。世界遺産の保護活動に焦点を当て、今後の世界遺産の在り方と世界遺産保護の実態を学ぶべく、カナダを訪れました。

概要

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目的国や地域における文化的な遺産がもたらす影響や、遺産を守るために奮闘する人々について学び、その知識を日本の文化継承に結びつける。同時に、日本が歩むグローバル社会に置いて、ボーイスカウトを通じて国や言語を超えて人々を結ぶこと、日本におけるボーイスカウト活動を活性化させるための人材となる。
目標1.「学ぶ」
カナダでの生活を通じて、人と文化が交わり、共生社会がどのように機能するかを深く学び、これを日本のボーイスカウトにおけるグローバリゼーションの視点で考察する。遺産や資料館の訪問を通して、カナダの多様な文化を理解し、現在の日本との比較を通じて、多文化主義のカナダから得た示唆を元に、将来のグローバル化する日本の在り方を探る。

2.「伝える」
滞在中に得た経験と知識を日本に持ち帰り、文化が形成する人々のつながりや遺産、生活様式を自国に伝承していく使命を果たす。多様な社会を広めるために、既存の概念にとらわれない視点や思考を展開し、帰国後はボーイスカウトに対して派遣の成果や世界遺産教育の講演を行う。

3.「守る」
文化は日々変化していく中で、残すべきもの、守るべきものを見極め、実際に伝承し保護する一翼を担います。世界遺産教育を身近な範囲から始め、存続の危機感と保護への意識を広めていきます。帰国後は、世界遺産教育のための講演やボランティア活動への参加、促進を自らの団や地域で積極的に行い、両国で培われたスカウト精神や活動を後輩スカウトにも引き継ぎ、交流と未来の活動を通してボーイスカウトの可能性を探ります。
期間2022年 8月22日〜9月7日
場所カナダ ケベック州 ケベック・シティ
    オンタリオ州 トロント
    アルバータ州 バンフ
    ブリティッシュコロンビア州 バンクーバー
参加者東京連盟
 成澤 椿(山手地区 目黒1団)
活動内容1.世界遺産保護活動調査
カナダの世界遺産を訪れ、歴史を学び、管理している現地の人々や遺産を取り巻く環境について調査する。そこから、それぞれの遺産が抱えている問題点に目を向け、日本の問題点と比較しながら、改善に向けて対策を考える。

2.ボーイスカウト活動調査
多民族国家カナダで、多文化・多宗教ならではの世界観を目の当たりにし、日本にはない多元性を重んじた生活を体験する。スカウトがグローバルな視野を持ち、各々のアイデンティティを確立させることのできる社会・環境を目指し、今後の集会や運営に携わっていく。
予算・参加費約56万円(うち、50万円は派遣経費として日本連盟が支援)

スケジュール

2022年5月末日 企画書作成、日本連盟に提出
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時間内容
募集要項にて記載されているプロジェクトの企画案を作成し、所属地区に提出。
所属地区の面接・審査を経て、日本連盟に提出。
2022年6月24日 企画書通過、2次選考へ
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時間内容
プロジェクトの企画案による第1次選考が通り、第2次選考ででオンライン面接を実施。
2022年7月中旬 計画書提出
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時間内容
第2次選考を通過し、プロジェクトの企画案をもとに計画書を作成し、日本連盟に提出。
2022年7月末日 派遣決定
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時間内容
派遣が確定し、計画書をもとに航空券・宿泊先の予約、訪問先のアポイントメント、必要備品の手配をする。
2022年8月22日 成田からトロントへ
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時間内容
17:30成田国際空港 出発
移動
16:30トロント・ピアソン国際空港 到着
2022年8月23日 ケベックシティ訪問
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時間内容
2:15トロント・ピアソン国際空港 出発
移動
3:30モントリオール・ピエール・エリオット・トルドー国際空港 到着
8:15モントリオール・ピエール・エリオット・トルドー国際空港 出発
移動
9:00ケベック・ジャン・ルサージ国際空港 到着
移動
12:00ケベック・シティ訪問
【フェアモント・ル・シャトー・フロンテナック】 インタビュー
【州観光局】
【ノートルダム大聖堂】
移動
19:00レジデンシーズ・ユニヴェルシテ・ラヴァルにて宿泊
2022年8月24日 ケベックシティ訪問
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時間内容
8:00レジデンシーズ・ユニヴェルシテ・ラヴァル 出発
移動
ケベック・シティ 到着
【シタデル】
【要塞博物館】
【ケベック州議事堂】
18:00ケベックで出会った大学生と夕食
移動
20:00レジデンシーズ・ユニヴェルシテ・ラヴァルにて宿泊
2022年8月25日 モントリオール・トロント訪問
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時間内容
7:00レジデンシーズ・ユニヴェルシテ・ラヴァル 出発
移動
7:25パレ駅 到着
8:10パレ駅 出発
移動
11:26モントリオール駅 到着
13:50モントリオール駅 出発
移動
19:00トロントユニオン駅 到着
移動
20:50スイートハートB&Bで宿泊
2022年8月26日 ナイアガラフォールズ・トロント大学
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時間内容
6:40スイートハートB&B 出発
移動
9:50ナイアガラ・フォールズ 到着
【ナイアガラ・フォールズ】
14:00ナイアガラ・フォールズ 出発
移動
クイーンズ・パーク駅 到着
【トロント大学】
【トロント市街地】
21:30ユニオン駅 出発
21:50スイートハートB&Bで宿泊
2022年8月27日 トロント訪問
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時間内容
8:00スイートハートB&B 出発
移動
8:12トロント・ユニオン駅 到着
【トロント・アイランド】
【トロント・イートン・センター】
移動
20:15スイートハートB&Bで宿泊
2022年8月28 バンフへ移動
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時間内容
5:08スイートハートB&B 出発
移動
6:00トロント・ピアソン国際空港 到着
7:35トロント・ピアソン国際空港 出発
移動
9:50ガルガリー国際空港 到着
14:00ガルガリー国際空港 出発
移動
15:40バンフ・アスペンロッジ駅 到着
【バンフ散策】
20:00セイムサン・バンフにて宿泊
2022年8月29日 バンフ国立公園ツアー参加
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時間内容
7:45セイムサン・バンフ 出発
移動
バンフ国立公園ツアー参加
【モレーン湖】
【テンプル山】
移動
14:30バンフ散策
21:00セイムサン・バンフにて宿泊
2022年8月30日 
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時間内容
8:30セイムサン・バンフ 出発
移動
バンフ散策
ホテル前駅 出発
移動
10:21ゴンドラ駅 到着
【ソルファーマウンテン】
【ゴンドラ】
13:00ゴンドラ駅 出発
移動
13:20カスケード・オブ・タイム・ガーデン 到着
【バンフ・スプリングスホテル】
【ボウ滝】
20:00セイムサン・バンフにて宿泊
2022年8月31日 バンフボランティアスタッフと国立公園散策
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時間内容
7:30セイムサン・バンフ 出発
バンフボランティアスタッフとともにバンフ国立公園探索
【バンフサイン】
【バーミリオン湖】
【モーレン湖】
【レイクルイーズ】
【エメラルド湖】
【ボウ湖】
【ペイトー湖】
17:00セイムサン・バンフにて宿泊
2022年9月1日 バッファローネーション博物館
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時間内容
8:00セイムサン・バンフ 出発
11:00バッファロー・ネーション博物館 到着
【バッファロー・ネーション博物館】
14:00バッファロー・ネーション博物館 出発
【バンフ散策】
【バンフ国立公園ボランティアセンター】
20:00セイムサン・バンフにて宿泊
2022年9月2日 バンクーバーへ
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時間内容
8:45セイムサン・バンフ 出発
移動
11:30ガルガリー国際空港 到着
14:30ガルガリー国際空港 出発
移動
16:00バンクーバー国際空港 到着
16:30バンクーバーでボーイスカウト活動をしているケビンさんと合流
16:35バンクーバー国際空港 出発
バンクーバー市内でケビンさんと夕食
20:00セイムサン・バンクーバーにて宿泊
2022年9月3日
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時間内容
9:15セイムサン・バンクーバー 出発
移動
9:30リッチモンド・ブリッジハウス駅 到着
ケビン山と合流
移動
10:00【リッチモンド12団の活動場所訪問】
【久野公園】
【スティーブストン博物館/スティーブストン缶詰工場】
【スフィンスルー】
【リッチモンド州議事堂】
14:30ケビンさんのご友人訪問1
17:00ケビンさんのご友人訪問2
21:30リッチモンド・ブリッジハウス駅 出発
22:05セイムサン・バンクーバーにて宿泊
2022年9月4日
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時間内容
9:00セイムサン・バンクーバー 出発
【バンクーバー美術館】
【バンクーバーコンベンションセンター】
【オリンピック聖火台】
【ガスタウン】
【人類学博物館】
19:00セイムサン・バンクーバーにて宿泊
2022年9月5日
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時間内容
9:05セイムサン・バンクーバー 出発
移動
10:00ウォーターフロント駅 到着
バンクーバー在住の友達と合流
11:00グランビルアイランド 到着
13:45グランビルアイランド 出発
移動
14:15ハーバー・センター・タワー 到着
14:50ハーバー・センター・タワー 出発
移動
15:00スタンレー・パーク 到着
【バンクーバー水族館】
18:30スタンレー・パーク 出発
20:00セイムサン・バンクーバーにて宿泊
2022年9月6日
スクロールできます
時間内容
9:30セイムサン・バンクーバー 出発
10:10バンクーバー国際空港 到着
12:30バンクーバー国際空港 出発
移動
2022年9月7日
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時間内容
16:00成田国際空港 到着

活動の様子

活動の様子1

ケベック・シティに訪れて最初に見えたのは、ケベック旧市街の城壁である。街全体を囲むこの城壁は、長い歴史の中でケベックを守り続け、街の人の文化を守る意識を守ってきた。また、中央に聳え立つフェアモント・ル・シャトー・フロンテナックは、街の象徴として歴史と文化を受け継いできた。ホテル運営者・州観光局の方にインタビューをさせていただき、文化を守るべき奔走してきた方々の実情を学ことができた。日本では大きな問題にはならない程度のゴミ問題や景観の損害にも大きな問題と捉え、対策を講じていると聞いた。日本の取り組みは、さらなる保護活動、世界遺産への認知を高めていく必要があると感じた。

シタデルは、フランスとイギリスの領地下にありながら、国を守るために尽力した人々の結晶が残っている。運営者のお話によると、現在でも軍用地として用いられているため、安全管理と世界遺産としての両立が非常に大変だとおっしゃっていた。軍用地でもあり世界遺産でもあるという他にない遺産の魅力にはそれなりの対策が必要だと感じた。

活動の様子2

トロントでは、この世界遺産派遣で重要なポイントであるナイアガラの滝を訪れた。ナイアガラの滝は誰もが知る滝だが、世界遺産登録されていない。以前は、世界遺産登録への動きがあったが、カジノなどの観光施設による自然景観が失われたこと、水力発電によって人の手が加えられたことなどによる理由で世界遺産の認定を逃した。これは、世界遺産保護や保全の観点から、失敗から学ぶ材料として非常に重要であり、大きな学びとなった。成功例や良い面をみるだけではわからないことがここにはあった。

活動の様子3

ボランティアスタッフの活動に参加させていただいた。初めてのバンフの山の探索では、山や川、湖に至るまで自然の偉大さと魅力を感じた。歩行中に現れるリスを見て自然に囲まれていると感じている私に、ボランティアスタッフは大きな問題でもあると話してくれた。人が餌をあげてしまうばかりに、自分で狩をせずに寄って来る動物が増えているということだった。こんなにも可愛らしい命が、出会ってから数日生きられるかもわからないと話されたときには衝撃を隠せなかった。目の前の命を目の当たりにして起こってしまう感情が、その命そのものを奪ってしまうという認識がない人による重い課題だと感じた。世界各地での世界遺産教育、自然保護教育の推進を促進することが重要だ。

観光地として展開しているゴンドラを訪れた。バンフの景観が一望できる山の山頂に約15分程度のゴンドラで行くことができる観光地である。ここへは、山に登れない子供連れの家族や高齢者をはじめとする多くの観光客が足を運ぶスポットだ。その反面、ボランティアスタッフの目が届いていない点、自然に対する意識の低い人々の心ない行動が横行している点などから自然景観の破壊が行われていた。また、そのクリーン作業も追いついていなかった。また、上から見ないと気づかなかった森林伐採の状況も見ることができた。ボランティアスタッフの方に後から聞いた話によると、バンフでは森林伐採に制限がかけられてその数は抑えられているものの、植林などの改善措置が取られていないという。森林が回復するまでに何十年もかかるのに、対策が行われていないのは、自然遺産の現場としては大きな問題だと感じた。

活動の様子4

この日は再びボランティアガイドの案内のもと、バンフを象徴する湖に案内してもらった。日本とは異なる湖の出来方によってできたその景色は、自然の中の歴史がもたらした遺産だと感じた。その景色の魅力にさらに拍車をかけたのはその大自然で生きる生き物たちである。10年このバンフで活動するスタッフの人が2回下見たことのないクマを目の当たりにした時、ドキドキはしましたが「共存」を感じた。このバンフがあるアルバータ州には、カナダ東西を結ぶ「トランス・カナダ・ハイウェイ」が通っている。ハイウェイの開通後、車にはねられて命を落とす動物が毎年100頭近くに上るようになった。この対策として、ハイウェイの下を通る動物専用の地下道「アニマル・アンダー・パス」、ハイウェイの上に架かる「アニマル・オーバー・パス」を建設した。とはいっても、未だ問題は100%解決されたわけではない。生物が生きやすい環境、生物が生きていたそのままの生活は未だ保証されていないのだ。

バンフ滞在最終日、バンフの自然を守る国立公園スタッフの方にお話を伺った。バンフで生まれたエリカさんは、カナダと日本のハーフで英語も日本語も話せるバイリンガルである。このエリカさんが私に教えてくれたのは、「知るだけでも力になる」ということ。彼女は、どんな力でも生かすことができるはずだと力強く答えてくれた。日本語と英語が話せることが評価されてこの仕事についたエリカさんの姿勢と努力は私をはじめ多くの方の影響力となっているでしょう。日本でも、世界遺産を守ることに国で挑むべき。そして、それぞれの能力を活かせる仕組みを構築していくべきだという意見は、新たな問題の解決策に活かせると感じた。

また、街の端にあるバッファロー・ネーションズ博物館に訪れた。ここでは、バンフ周辺で生活してきたファースト・ネーションズの方達の歴史とその全貌を知ることができる。一見、カナダの中でバンフにおけるファースト・ネーションズの差別は大きな問題のように感じない。確かに、他の地域に比べれば互いに尊重し合った生活を送っている。しかし、彼らの居住区はバンフの街から少し離れたところにあることや、バンフの街の観光業で一緒に働くといったことはないと現地のスタッフの方は話していた。先住民族の方が独自で商売を運営し、ツアーを開催しているため、収入の偏りなどが発生してしまうことが問題であると知る機会となった。

活動の様子5

バンクーバーに着くと、空港出口でリッチモンド12弾のケビンさんが迎えてくれた。彼とは派遣前から連絡を取り、さまざまなサポートをしてくれた。現地で会えた時の喜びは忘れることができなかった。

この日は、ケビンさんの案内のもと、リッチモンド12団の活動エリアであるスティーブストンを訪れた。リッチモンドは遠いようでとても日本と深い関わりがあった。それは、1888年、日本の和歌山県出身の工野儀兵衛さんがスティーブストンに渡り、冬季は農業、夏季は鮭漁業に従事した。かえRを追って多くの日本人が移民としてわたり、この地には多くの日系人が残っているという。彼が鮭缶詰工場を運営したことや街の運営に携わったことは、カナダ太平洋岸の鮭漁業の発展に大きく貢献した。その功績を讃えて、顕彰碑や「工野公園」が建立された。リッチモンドの街を支えた鮭漁業の名残は、鮭缶詰工場跡地や現在も多くの人で賑わう漁港に強く残っている。この後、リッチモンド州議員であるヘンリさんのもと、リッチモンド州議事堂の案内をしていただいた。リッチモンドと奈良県の交流の歴史、リッチモンドが現在取り組んでいる問題についてお話を伺った。また、ケビンさんのご友人宅にお邪魔し、カナダのセンクスギビングデイを体験することができた。そして、リッチモンド12団の団委員長であるジュディさんとケビンさんと共に食卓を囲んで今後のスカウティングについて話をした。姉妹団という数少ない価値ある交流を続けていくことが重要だと話し合った。

活動の様子6

バンクーバーはカナダの都市の中でも、ヨーロッパ系よりもアジア系カナダ人が多いことでも有名である。アジア系カナダ人は人口の約半数を占め、人種のサラダボウルを目の当たりにした。そんなバンクーバーで重宝されている人類学博物館は、世界遺産ではないが、カナダの歴史を語る上で非常に重要な遺産である。トーテムポールの展示や地元の先住民族によるアートなど、約53万5000点に及ぶ民族学・考古学的収蔵物を誇る。また、1800年代には製鉄所と林業の街として賑わっていたガスタウンをはじめとする市街地では、今ではお店や観光地などの世界中から人が集まる大きな都市へと生まれ変わっていることを実感した。

事前準備

事前準備①

年度の初めにボーイスカウト日本連盟HPに掲載される募集要項に沿って、まずは企画案を作成する。所属する団の隊長と所属地区のコミッショナーのアドバイスをもとに修正を重ね、地区、東京連盟を通して、日本連盟に期日までに提出する。

事前準備②

企画案の第1次選考が通ったら、日本連盟の面接を受け、その結果次第で計画書を作成する。その計画書の提出後、最終審査があり派遣の実施が確定する。

事前準備③

計画書で提出した派遣先の宿泊や交通手段、インタビューやボランティアなどのアポイントメントをとる。

事前準備④

期間中は、飛行機に乗る頻度が多く、ロストバゲッジを避けるためにバックパックでの移動となった。そのため、荷物を最低限にするべく備品を調達した。

所感

今回の派遣は、私にとって全てが「挑戦」であった。この派遣まで、一人で日本国外に出たことも、一人旅をしたこともなかった私が、一人で日本から遠く離れたカナダを訪れ、自分の「知りたい」「見てみたい」という思いを実現させることができた。言語をこえ、文化を超えた交流には、正直不安もあり、実際に現地では悩まされることも少なくはなかった。しかし、それを達成できたのは、今まで培ってきたボーイスカウトのスキルと出会いだと感じている。

ボーイスカウトのスキルといっても、もちろん手旗やロープワークなどのスキルは非常に重要で欠かせないものだと言える。しかし、突然のハプニングにおける対応力やリスクを察知する能力、自分の能力を客観的に図る能力は、今まで私が団のハイキングやキャンプ、集会で得てきたものである。さらには、ボーイスカウトのモットーである「そなえよつねに」は今回の派遣においても欠かせない概念であった。計画段階から何があるかを予測しさまざまな下調べや対策を打つことができた。その結果、大きなトラブルに巻き込まれることもなく、無事に派遣を達成することができたのだ。

そして、今回の派遣は約3週間一人での挑戦となった。もちろん、計画段階から一人というわけではなく、所属団の体調をはじめとするリーダー、所属している地区のコミッショナーの皆様、東京連盟・日本連盟の担当者の方々、そして派遣先でのケビンさんをはじめ、多くの支えがあってこうして達成することができた。私がここまで挑戦できたここまでに多くの方の支えがあったことを強く感じ、そこから自分が得た経験を次世代の後輩スカウトにも繋いでいきたいという思いが強くなった。また、国境や言語の壁を超えたたくさんの支えがあった。一緒の寮で生活したルームメイトや、バスや電車に乗り合わせた方々、同じボランティアに参加している人々が、困ったときには手を差し伸べ、寂しいときには食事を共に囲んでくれた。ボランティア参加者とは、カナダの自然に憧れ、守りたいと思った人と意見交換をしたり、互いの国の文化について話し合ったりもした。

この経験は、私の人生の中で、かけがえのないものであり、忘れることのできないものとなった。しかし、この派遣は終了したが、私のプロジェクトは終わっていない。その理由として、今派遣の目的である、次世代のスカウトに繋ぐことを続けていくことが重要であると思うからである。この経験は、私だけにとどめることなく、一人でも多くのスカウトに伝えていくことが私の重要な使命だと認識している。それだけではなく、誰もがどんな問題や山場を越えるために挑戦をするきっかけを与えられたらいいなと考えている。それは、海外派遣だけではなく、ボーイスカウトが展開する全てのスキルや活動がその挑戦に欠かせないということを伝播して行けたら嬉しく思う。

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